いつからここに彩りが無くなったのか、そういえば覚えていない。

記憶まで彩りを無くしているようだ。

西には未だに彩りがあるらしい。
様々な文化がここで生まれたのだ。

いつになっても彩りは衰えず、そのまま世界を繕えそうだ。

何もかもが凍てつきそうなくらい
冷え冷えとした夜です

さもありなん

いまや夜が凍傷に掛かる

（氷に閉ざされたのは紅い花)

はるかに浮かぶ月が外を思い出させてくれるが

ここは所詮、仕切られた中の世界

だが勿論目を開けられるはずもなく
眩しさに目を瞬きするのが精一杯

「おはようおはよう」
駆け抜ける閃光が囁く

月が顔を出す

頭を抱えて。

やがて眠りに落ちる。

そう言った者がいる。
しかし、なぜ無いのかを語らなかった。
多分、その人は足元を見なかったのだろう。

天高く聳える尖塔に突き崩され
雨どいを経て
いまや
下水に流れ込む

世界が開くとそこには世界

緑の木々と
川の流れと
かかる橋と

まるでそこにいるかのように事細かに描かれた文字。

母さんは布団の中。
パンと角砂糖は僕の手の中。
父さんは船の中。

牛乳はない。
灯りもない。

灯りを灯し。
トマトのシチューを僕の中へ。
牛乳はやがてこの家へ。