にもかかわらず、卓上にはコップが微動だ似せず置いてありますし、波打つ足元の波も水平線の彼方へ身体を運び去ることはないのです。

　それに、これだけ高いとぶつかる何かがあるのか、青いランプが灯っています。夜にはさぞかし目立つことでしょうね。

　流石に今はやってませんが、見るのは好きですよー。

　下から見たときには小さな建物に見えたものですが、こうして見ると数階建ての中々な館という感じです。
　小さな青いランプが、真昼だというのに煌々と明かりを灯していて、歓迎でもしているようです。

　ということは、この急な階段をそれだけ上ってきたということで・・・考えるだけで気が遠くなりそうです。
　そして、先はまだまだ。
　　まるで雲をつかむような話・・・いえ、いくらなんでも雲をつかむ為にとはいえ、再び下りるなんて考えたくもないのですけれどね。

　彼女の視線だけがそれを知っている。

　周りには風が渦巻いていて、うっかりすると吹き飛ばされそうなのですが、それでも何となく大丈夫という気もします。
　それにしても随分と古い階段のようで、所々に草が生えてきています。それに、そこら中が電線の通り道になっているんですよ？

　階段は塔の中にあったように思えるのですが、ここは確かに表です。
　それにしてもこの階段の急なこと、この上ない代物です。
　とはいえ、所々に休憩するような場所があってとても助かります。そこにはベンチと街灯しかないのですが、おかげで夜でも大丈夫そうです（それ以前に、遥か頭上に見える｢大地｣にはいつになったらたどり着けるものやら）