扉の中も外と大して代わり映えしないのですが、霧が濃い立ち込めていてハッキリと物が見えません。
　何しろ余りに濃いので、水の中にいるようです。

　おめでとうございますー

やっぱこの人がいると安心感がありますよね☆
って、左側の有刺鉄線が妙に気になるんですけど；

　有刺鉄線は気にすると駄目です。
　気にすると気になりますから気にしちゃ駄目です、駄目ですってばっ！

　それにしても、そこら中に配管が走っていて機械の類は見当たりません。
　そもそも、この配管もどこから来てどこに走っているのかまったくわかりません。

　ということはこれは煙突ではなくて、何かを吸い取っているパイプかもしれません。

　何を作っているのかまったくわからないのですが、空気は清浄極まりなく、辺り一帯はまるで凍りついたかのように静寂に包まれ、それでいて廃工場にあるような錆臭さもなく、故に活動中であると知れ、実に工場らしかぬ工場です。
　とはいえ、見た目は工場以外の何物でもないのですけれど。

という、切迫した光景。

　そこはまるで水墨画のような、霞んだ灰色の世界ですが、しかし昔からの水墨画と違うところもあります。
　それは視界の隅に映る、小さな工場のような場所です。どうも、その工場のせいでこの辺りからは色が抜けているような気がしてなりません。
（そういえば、虹の『色』を食べるというゴブリンもいるのです）

　そこは色とりどりの配管が走り回る、小さな空間です。その多くは半ば透明なのですが、何が流れているのやらまったくわかりません。

　街の中に入ると空はどんどん薄くなって、今にも消え去りそうです。
　消え去った空のあとには雲（それも薄くなってきていますが）と光だけが残り、「空（そら）」は「空（から）」へと近づいていくようです。